STAFF
ナレーション
宇梶剛士
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<略歴>
うかじ・たかし
1962年8月15日 東京都出身。10代終わりに俳優の世界に飛び込み、硬軟を問わずの表現で映画、テレビ、舞台で活躍。主宰を務めた劇団パトスパック「永遠ノ矢トワノアイ」(作・演出・出演)では北海道を舞台に、東京で生まれ育ったアイヌ青年の、自己や世界との向き合いを描き、映像版が全国順次公開中。
プロデューサー
藤原良雄
宇梶静江という人
宇梶静江という女性に出会ったのは、2016年6月のことだ。「アイヌの子守唄」の舞台を見て、その後、藤原書店の催合庵で面談した。齢八十過ぎにしては、バイタリティのある純朴な方だなと思った。最後に、「明日から脚の手術で京都に一カ月ほど入院します。見舞いに来て下さいね」と。びっくりしたが、京都に仕事で行った時に病院を訪ねた。
その後、小社の催合庵で月に一、二回彼女と面談している内に、この人の半生を、本にしてみよう、映像を撮ってみようという気が湧いてきた。それからご一緒に何回か北海道のアイヌの方々と出会う旅を重ねた。アイヌについての知識は、まだほとんど緒についたばかりだが、宇梶静江という大きな素朴なレンズを通して、日々色々学ばせてもらっている。
この映画は、宇梶静江という一人のアイヌ女性を通して、今先住民アイヌ(人間)の人々が、何を求め訴えようとしているかに迫ったドキュメントだ。
<略歴>
ふじわら・よしお
藤原書店社主。1949年大阪生まれ。新評論編集長を経て、90年春、㈱藤原書店を創業。20世紀最高の歴史書であるブローデル『地中海』(全5巻)の出版で、92年第1回「青い麦編集者賞」を受賞。97年にはフランス芸術文化勲章(シュヴァリエ)を受章。また、毎日出版文化賞をはじめ国内の数々の賞を受賞。2018年6月、フランス文芸の最高のアカデミー・フランセーズより、フランス文化を世界に広める貢献をしたとして「フランス語フランス文学顕揚賞」を受賞。日本人で3人目、日本の出版者では初の受賞。21年には井上靖記念文化賞特別賞受賞。その他の代表的な出版物として、『正伝 後藤新平』全8巻、『石牟礼道子全集 不知火』全17巻、『金時鐘コレクション』全12巻、『中村桂子コレクション』全8巻、『全著作〈森繁久彌コレクション〉』全5巻、など多数。2023年3月末現在、1485点を刊行に至る。
藤原書店オフィシャルサイト
監督、音楽、撮影、構成
金 大偉
調和のとれた自然に導かれて
神羅万象が繋がって、人間の意識が調和のとれた自然に導かれて、精神と共に調和された方向に進む。時には、人間の意識や思いが他者と共有し、良き意味で伝 染し合うのである。宇梶さんはシャーマンであると思う。多くのインタ ビューによって様々な思いや情感を表出し、大自然の意識やそのエネルギーを憑依させて、力強く人間と自然との調和や共生の形を訴えている。アイヌの人々が守り伝えて来た良き文化や生きるための知恵。共生、共存への統合意識を、私たちに伝えようとしている。古き文化の伝承であると思う。混迷している現代社会、不安定な世界情勢、自然が破壊され続けている中、今こそ「調和」へ向かうべき時期であると言えよう。戦いと分離の形ではなく、民族の違いにおける境界や壁を超えることによって、真の生きる姿や共存が誕生し、切実な平和世界が訪れてくるのであろう。
私たちは、調和のとれた自然に導かれて、失われゆく民族の良き意識やアイデン ティティーを取り戻すことが、世界において、すべての民族の共同意識であるように思う。アイヌの文化や古代から伝承された知恵を通して、カムイと人間と自然と見えない世界との「共生の姿」を、素直に、映像と音の力で描いたと、今はそう思える。とても貴重な制作体験でした。宇梶さんをはじめ、関係する全ての皆様に心より感 謝申し上げます。
<略歴>
きん・たいい
中国遼寧省生まれ。父は満洲族の中国人、母は日本人。来日後、独自の技法と多彩なイマジネーションによって音 楽、映像、美術などの世界を統合的に表現。近年は様々な要素を融合した斬新な空間や作品を創出している。音楽 CD『Waterland』('97)、『新・中国紀行』('00)、『 龍・DRAGON 』('00)。また中国の納西族をテーマにした『TO MPA東巴』('03〜'07)シリーズ3枚を発売。『冨士祝祭〜冨士山組曲〜』('14)、『鎮魂組曲2 東アジア』('17)、 『マンチュリア サマン』('18)など23枚リリース。 映画監督作品は、『海霊の宮』('06)、『水郷紹興』('10)、『花の億土へ』('13)、『ロスト・マンチュリア・ サマン』('16)、アート映像『シマフクロウとサケ』('21)など多数。また自身の表現世界や創作への思想などを まとめた著書『光と風のクリエ』('18)などがある。最新映画は、失われゆく満洲族の文化をテーマにした『天空のサ マン』(’23)。アイヌ文化と民族の共生をテーマにした『大地よ』(’23)。
金 大偉オフィシャルサイトhttp://www.kintaii.com
金 大偉文化アートチャンネルhttps://www.youtube.com/@user-fd9ty3xr6z/videos